Tuesday, October 9, 2012

芸術祭レポート BIWAKOビエンナーレ2012 御伽草子 - FaireTale - 「現場主義」



ジャン=リュック・ゴダールという映画監督の「撮影すべきは撮影しながら発見する」ということばが近江のまちと歴史に共鳴し合うビエンナーレにはぴったりだと思いました。現場との対話、現場との呼吸。あったりなかったり、見えたり見えなかったりする支持体に作家の感性が反応しながら、ほとんどの作品はその場で創造されています。


特に数名の作家がひとつ屋根の下で共にインスタレーションを展示している場合、家屋全体に流れる空気や匂いは作家の創作への思い×人数分。それがそのまま体中に蔓延して感情を沸かせにかかります。

ともすると通り過ぎた古いだけの家や見過ごした道端の石、多くの景色を豊かな感受性と才能が加わると特別な「いま」へと存在感たっぷりに華麗なる変身を遂げます。

作家の感性を通しての歴史観。今はもうないものや過去のできごとをお伽草子として。この家には数百年の歴史があり、生活があり、会話があったのだという事実。

「歴史を学ぶならまずはその場に立つことから」は上司の言葉。まちや歴史への愛着スイッチがONになった時、ああ、これが芸術祭の醍醐味なんだなぁと実感します。

多くの作家を一度に見れることや出会いも楽しみではありますが、近江のその道が家屋の一軒一軒が愛おしくてたまらなくなる“芽生え”は心地良く新鮮です。また訪れたい。できれば期間中に少なくとも2回は。なぜって、5分の1も廻れなかったから。Oh lala!







日牟禮(ひむれ)八幡宮の鳥居

10/06 sat. 12 : 30 in 近江八幡 まちのあちこちにボランティアガイドさんがいらっしゃって丁寧に案内してくださいます。まずは車を停めようと八幡宮の駐車場へ。満車。臨時駐車場を案内してくださって「ほっ」1日¥300です。駐車券と一緒に『近江八幡のまちなみガイドマップ』をいただきました。ビエンナーレとリンクしてないのが残念。







八幡堀

臨時駐車場から八幡宮までは歩いて10分ほど。チケット(大人¥2,000です)を購入するために天籟宮(てんらいきゅう)へ。チケットはスタンプカードになっていてお得な割引特典もあります。天籟宮の入口前はお掘りになっていて、向こう岸には「かわらミュージアム」や八幡堀めぐりの乗船場があり城下町の情緒を楽しめます。お腹ぺこぺこで、八幡宮向かいの「宮前たちばな」で陶板焼膳(すき焼き)¥1,500を。時間に余裕のある方はお堀に添って歩いたり、近江商人屋敷界隈に点在する町家カフェを探索するのもおすすめです。







ロープウエイからの近江八幡パノラマ

八幡宮の鳥居をくぐり参道を抜け八幡山の麓のロープウエイ乗り場へ。途中右手に和菓子の「たねや」左手に洋菓子の「HARIE」がありびっくりしました。参道ですから!ロープウエイ乗車券はチケット提示で往復¥400(スタンプ押印ポイント)







中島崇(なかじまたかし)さんと作品

13 :30 山頂降車後、右手すぐの展望台へ上ると中島崇(なかじまたかし)さんの作品が。オーロラのようでもあり、雲の中のようでもありすごく楽しそうなのだけれど、残念なことに展示位置が上過ぎて本来太陽とのセッションを楽しめるはずの「見え」が体感できなかったんです。中島さんはとても気さくでたくさんのお話を聞かせてくださいました。







大舩真言(おおふねまこと)さんの作品

さらに奥へと進みます。大舩真言(おおふねまこと)さんの芸術鑑賞を目的に村雲瑞龍寺へ。チケット提示で拝観料¥200(スタンプ押印ポイント)瑞龍寺は想像以上にお庭や回廊、導線、景観、とても美しい佇まいでした。このようなお寺があることを知れたことも大収穫です。大舩さんがなぜこちらでの展示を所望されたのかは一目瞭然ですし身をもって感じることもできます。響き合う小宇宙と大宇宙、森羅万象や営みをこんなにも心地よく何より厳かに瞑想できるのですから。







青木美歌(あおきみか)さんの作品

15 : 00 下山し、八幡宮からお堀に添って歩いて目指すのは幸村邸隠居、青木美歌(あおきみか)さんの「未生命の遊槽」(スタンプ押印ポイント)。神秘的に妖しく隠居のあちこちを浮遊する未生命にぞくぞくします。槽は棺に、未生命は遺骨のようにも見え、生命の終焉と誕生の表裏一体、このうえなく美しいかたちの陰陽道の五行説を体全体で記憶しました。大好きな作品のひとつです。もうすでに15 : 30 を回っています。残念ですが五個荘行きはこの時に断念しました。







大和由佳(やまとゆか)さんの作品

さあ、大本命2本柱の1本、旧中村邸・大和由佳(やまとゆか)さんの「灰屋の家/白の飛来」へ。道中で灰屋からの使い?白鷺に遭遇。伏線のようでドキドキします。いよいよ6名のエネルギーとの対面です。特に順路はないようなので大和さんの作品のある2階へ。うわっ!えっ?天井にまず目を見張ります。と同時に鼻や喉をつきさす粒子とか埃500年の灰屋の歴史の塵に歓迎され、ふと目を伏せたら足下には白鷺が。塵は生の象徴かのように息を吹き返し伝承が羽ばたく暗示?所狭し積まれた塊がゴロゴロ、行き場のない遺物でしょうか?産物でしょうか?とにかく息苦しい。ああ、ここから外界へ飛び立つんだ。白鷺は今にも飛び立ちそう。これ以上進めない羽のない私は階段をすごすごと下りました。階下ではなぜ?が渦を巻くのですが、どうすることもできません。気持ちを切り替え「わからない」を楽しみました。強烈なインパクトで満ち満ちている旧中村邸は小堀遠州の作庭や素晴らしい欄間や床の間、柱など建築様式も楽しめます(スタンプ押印ポイント)。







川北ゆうさんの作品

16 : 35 急げ!大本命のもうひとり川北ゆうさんをめざして天籟宮へ。ふう、9名の作家のエネルギーに圧倒されもうヘロヘロです。ゆうさんの溢れるエネルギーに対等に向き合えるでしょうか?ギブアップ寸前、写真もぶれぶれです。ふたつの異なる生の対峙、その間に立つ私。もっとゆっくりもっと深く対話したい作品です。すると後ろから「どうやって描いてるんや?」「わかるか!」などと言い合いながら大学生らしい男子ペアが興味津々にテキストを一心不乱に音読し始めました。ゆうさんの作品には誰もが惹き付けられるようです。なんだか可愛くて吹き出しちゃいました。すてきな光景です。






八幡山から雄大な近江平野を望み深呼吸

そんなにのんびりしたつもりはなかったのですが 17 : 30 タイムオーバー。この近江のあちこちにまだ見ぬ50数名の作品が存在していることへの名残惜しさが、夕暮れにはせる思いと重なります。けれど大満足です。こんなにもワクワクしながらまちを歩いたのは初めてかもしれません。欲を言えば展示作品の説明がもう少し欲しかったなあ、と。そういったリストはどうやっても手に入りませんでした。何度も足を運べる近隣の方が羨ましいです。
BIWAKOビエンナーレは11月4日(日)までです。






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